廃棄物の定義とは?有価物との違いはなに?
はじめまして、産廃太郎と申します。
廃棄物処理会社に勤めて約10年、普段生活しているだけでは知り得ない廃棄物の知識を学ばせていただきましたが、知れば知るほど廃棄物の法律は難解で複雑なものになっています。
廃棄物処理会社で実務を担当している方でも「あれ?これってどうだっけ?」と頭を悩ますことって多いんじゃないでしょうか。
このブログは、大前提として私の忘備録的なものではありますが、廃棄物業界に初めて勤める方や、他業界でも排出事業者として廃棄物業務に携わる方に向けた内容にしようと思っています。
今回は廃棄物とは何なのか、有価物との境目はどうやって誰が決めるのかを紹介します。
一見簡単そうな内容ではありますが、法律上ははっきり区別することが難しく、廃棄物に精通している方でも明確な答えは出しづらいかと思います。
その理由を紐解いていきましょう。
廃棄物の定義
まず、日本の法令として昭和45年(1970年)に制定された「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(通称:廃棄物処理法、廃掃法)では廃棄物がどう定義されているでしょうか。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)第2条によれば、「廃棄物」とは「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによって汚染された放射性廃棄物を除く[2])をいう」とされており、産業廃棄物と一般廃棄物に大きく2分類される。
廃棄物は法令上、上記の種類が定まっていて、その不要物を言うんですね。
「なんだ、産廃太郎。明確に答えが出てるじゃないか!」と聞こえてきそうですね。
でも、ちょっと待ってください。
その「不要物」って誰がどういう基準で決めるんでしょうか。
客観説
次に、昭和46年(1971年)の施行当初の通知を確認してみます。
廃棄物とは、ごみ、粗大ごみ、汚でい、廃油、ふん尿その他の汚物又はその排出実態等からみて客観的に不要物として 把握することができるものであつて、気体状のもの及び放射性廃棄物を除く、固形状から液状に至るすべてのものをいうものであること
なるほど。客観的に不要なものと判断されれば全て廃棄物なんですね。
・・・あれ?この言い方って何か引っかかりますよね。
そうなんです。この「客観的な視点」だけで判断すると色々と不都合な場面がでてくるんです。
例えば、排出者にとっては不要物だとしても、ある業者が見れば資源性があり、有価で取引できるものについても廃棄物処理法の対象になるため、リサイクルの促進が妨げられるんです。
???
なぜリサイクルの妨げになるんでしょう。
それは廃棄物処理のためには様々が許可が必要になるからです。
例えば、ある会社の事務所から排出される可燃ごみを料金を貰って回収するには「一般廃棄物収集運搬業許可」が必要になり、製紙会社の工場から製紙残渣が排出され、それを料金を貰って処分するには「産業廃棄物処分業許可」が必要になります。
有価物だと判断してたものが廃棄物であるなら、問答無用で上記のような許可が必要になり、業務のハードルが一気に高くなるのです。
大体、廃棄物処理法は不当な処理や、不法投棄を取り締まるべく施行された法律なのに、有価で買い取ってまで最資源化してる会社まで適用するのは筋が違いますよね。
総合判断説
そこで、さらに6年後の昭和52年(1977年)に前回の通知に対しての改正通知が発出されます。
廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で売却することができないために不要になつた物をいい、これらに 該当するか否かは、
占有者の意思、その性状等を総合的に勘案すべきものであつて、排出された時点で客観的に廃棄物 として観念できるものではないこと
この通知こそが、現在の廃棄物と有価物の境目の考え方になる「総合判断説」の基本になります。
おから事件
具体的にこの「総合判断説」が最初に採用された裁判の内容を見てみましょう。
<事件概要>
豆腐を作るために大量に排出される大豆のしぼりかす「おから」を、都道府県の許可なくお金をもらって引き取っていた業者が、
産業廃棄物収集運搬業および処理業の無許可営業として検挙されました。これに対し、業者は「おからは飼料や肥料として活用
されている資源であり、しかも産業廃棄物業許可の例外とされている『専ら物』であるから、無許可営業には当たらない」と主張しました。
そこで裁判所は以下のとおり判決を下します。
一 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(平成五年政令第三八五号による改正前のもの)二条四号にいう「不要物」とは、自ら利用し又は他人に有償で譲渡することができないために事業者にとって不要となった物をいい、これに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び事業者の意思等を総合的に勘案して決するのが相当である。
二 豆腐製造業者から処理料金を徴して、収集、運搬、処分した本件おからは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(平成五年政令第三八五号による改正前のもの)二条四号にいう「不要物」に当たり、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成四年法律第一〇五号による改正前のもの)二条四項にいう「産業廃棄物」に該当する。
・・・なんだか難しいので、簡単に解説しましょう。
1.おからは非常に腐敗しやすく、不適切な処理をすれば悪臭などを放ち生活環境保全上で支障をきたす可能性がある。
2.有効活用されているおからは全体からみてごくわずかであり、大半は有料で産業廃棄物業者に処理を委託されている。
上記の理由から、最高裁は「その物の性状」と「通常の取扱い形態」からおからを廃棄物と判断しています。
したがっておからを取り扱うには、産業廃棄物収集運搬業および処分業の許可を取得しなければなりません。
総合判断説の5つのポイント
平成25年に出された行政処分の指針についての通知では、従来の考え方をまとめる形で、総合判断説の5つのポイントが示されています。
物の性状:利用できる品質であり、生活環境保全上支障が発生する恐れがないこと
排出状況:排出が計画的で、排出までに適切な保管や品質管理がなされていること
通常取扱い形態:製品としての市場があり、通常は廃棄物として処理されていないこと
取引価値の有無:有償譲渡がされており、かつ客観的に見て取引に経済的合理性があること
占有者の意思:適切に利用もしくは他人に有償譲渡する意思があり、放置・処分する意思がないこと
廃棄物と有価物の違いは?
ここまでまとめてみても、やはり廃棄物と有価物のボーダーラインをはっきりさせるのは難しいと感じます。
絶対的な答えが見つからない場合は、お近くの行政もしくは業者に問い合わせることをおすすめします。
自分の中で答えを見つけながら、慎重に取引を検討しましょう。
それでは、また。