事業系一般廃棄物の取扱いでよく聞く「あわせ産廃」とは?
どうも産廃太郎です。
今日は廃棄物を取扱う際によく聞く「あわせ産廃」とはなにかを紹介したいと思います。
INDEX
あわせ産廃とは
前回紹介したように廃棄物は排出元の業種や種類から「産業廃棄物」と「一般廃棄物」に分けられそれぞれ適正に処分する必要があります。
事業系一般廃棄物として飲食店の生ごみを回収するはずが、廃プラスチック類(※廃プラスチック類は事業を伴って排出された場合はあらゆる分野関係なく産業廃棄物として適正処理しなければいけない。)が混合していた。なんて話は業者からしてみればよくあることです。
正直、処理会社から排出事業者へお願いしても全ては改善されないというのが現実的な問題としてあります。行政としても一般廃棄物の処理責任は市町村にあるので、行政施設に搬入される場合は展開検査などを実施し、その対策に注入しています。
では、ちょっとでも産廃が混入していると一廃としては処理されないのか?というとそうでもありません。廃棄物処理法では以下のとおり市町村の産業廃棄物の取り扱いについてが明記されています。
市町村は、単独に又は共同して、一般廃棄物とあわせて処理することができる産業廃棄物その他市町村が処理することが必要であると認める産業廃棄物の処理をその事務として行なうことができる。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律第11条第2項
これが「あわせ産廃」です。
区分する意味
「なら、ややこしいこと言わないで全部あわせ産廃として自治体が処理すればよくない?」
いやいや、それは短絡的です!
条文にもあるように「市町村は、(中略)行うことができる。」なので市町村が産廃を処理する義務はありません。あくまで産廃を処理しても違法にはならない、という意味です。
市町村は自治体の処理負担を少しでも減らしたいので、産廃はできるだけ民間の処理会社でなんとかしてね〜というのがホンネです。
それに皆さんが収めている税金で「処理する必要のない事業者のごみ」を負担するのは正直イヤですよね。
あわせ産廃が自治体で処理できない場合
行政施設が受入できないあわせ産廃はどうすればいいのでしょうか。
基本的に、
「自治体に処理方法を確認する」
これしかないです。
行政施設に搬入する場合は完全に産廃と一廃を分類する必要があるので、それは実務上、コストや時間がかかりすぎるため困難。ではどうするかというと、上記のように自治体に処理方法を確認して「産廃として民間の処理会社に委託する」と指導してもらうしかないです。
こういった法整備がちゃんと整えば処理会社も判断に迷わず済むのですが・・・
では、また。
産業廃棄物委託契約書の必須項目とは!?
どうも、産廃太郎です。
最近は年度末と年度初めで忙しい日々を過ごしている方が多いんじゃないでしょうか。私も社会の歯車として業務を遂行しております。
前回の記事で産業廃棄物の処理責任は排出した事業者にあることを説明しました。
しかし、一般的な事業者は自社で廃棄物を処理することが困難なので廃棄物処理の許可業者にその業務を委託することになります。その際に排出事業者と処理業者の間で必要となるのが記事のタイトルにもある「産業廃棄物委託契約書」です。
廃棄物処理法にはその締結が必須だとされていますが、記載しなければいけない項目についても明記されています。
今回は前述した廃棄物契約を企業間で締結する際に担当者が把握すべき項目を確認しましょう。
産業廃棄物収集運搬および処分委託契約書に必要な項目
- 委託する産業廃棄物の種類・数量
- 委託者が受託者に支払う料金
- 受託者の許可の事業の範囲
- 委託契約の有効期間
- 適正処理のために必要な情報として、「産業廃棄物の性状、荷姿」「通常保管状況下での腐敗、揮発等、性状変化の情報」「他の廃棄物との混合等により生ずる支障」「日本工業規格C0950号に規定する含有マークの表示がある場合は、その表示に関する事項」「石綿含有産業廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物又は水銀含有ばいじん等が含まれる場合は、その旨」「その他取り扱う際に注意すべき事項」
- 委託契約の有効期間中に当該産業廃棄物に係る前号の情報(上記5の事)に変更があった場合の当該情報の伝達方法に関する事項
- 受託業務終了時の委託者への報告に関する事項
- 委託契約解除時の未処理廃棄物の取り扱い
産業廃棄物収集運搬委託契約書の必須項目
- 運搬の最終目的地の所在地
- 積替保管を行う場合は、保管場所の所在地、保管する産業廃棄物の種類・保管上限
- 安定5品目の積替保管を行う場合は、積替保管場所で他の廃棄物と混合することの許否
産業廃棄物処分委託契約書の必須項目
- 処分または再生の場所の所在地、処分方法、施設の処理能力
- 最終処分の場所の所在地、処分方法、施設の処理能力(中間処理を委託する場合)
- 輸入廃棄物の場合は、その旨
留意点
委託契約書のモデル様式は東京都や各廃棄物の協会で簡単にDLできますが、特に注意すべきは建設業界が建設廃棄物に特化した様式を利用されている方です。
※建設廃棄物とは建設工事で発生した副産物のことで、建設発生土と有価物以外のものをいいます。建設業に係る工事で排出される廃棄物は業種限定の対象であり、紙くず、木くず、繊維くずは産業廃棄物に該当します。
私は廃棄物の中間処理施設の事務員として、自社運搬の排出事業者や収集運搬会社が作成した契約の締結手続きを担当していますが、業界が発行する建廃様式を利用されている会社さんは前述の必須項目を満たしていないまま契約書を持ち込まれる方が多いです。特に適正処理のために必要な情報(廃棄物の性状、荷姿等)は記載漏れが多いため気をつけましょう。
それでは、また。
一般廃棄物とは?産業廃棄物との違い
どうも、産廃太郎です。
今回は「廃棄物の定義」にもキーワードとして出てきた「産業廃棄物」と「一般廃棄物」について説明します。
一般廃棄物の定義
総合的に判断して有価物にならないものは廃棄物に該当すると前回説明しました。その廃棄物は大きく「産業廃棄物」と「一般廃棄物」に分類されます。産廃というのは一般の方でも聞き馴染みのある言葉かと思いますが、一般廃棄物とは何なのでしょうか。
今回も日本の法令である廃棄物処理法を確認します
第二条
(中略)
2 この法律において「一般廃棄物」とは、産業廃棄物以外の廃棄物をいう。
「なるほど!一般廃棄物は産業廃棄物以外のものを言うんですね!解決しました!ありがとうございます!おつかれさまでした〜」
・・・これで理解できたら、苦労しませんよねw簡単な図解があるので、まずはそれを確認しましょう。
産業廃棄物
産業廃棄物とは廃棄物処理法で規定された20種類の廃棄物のことをいいます。産業廃棄物の種類は大きく「あらゆる事業活動に伴うもの」と「特定の事業活動に伴うもの」に区分されます。特定の事業活動に伴う廃棄物は業界で業種限定と言われ、同じ種類の廃棄物だとしても排出元の違いで「産業廃棄物」or「一般廃棄物」に該当します。
例えば建設業許可の造園工事(庭園、公園、緑地等の苑地を築造する工事)で排出された木くずは「産業廃棄物」になりますが、一方で造園屋さん(主として請負で築庭、庭園樹の植樹、庭園・花壇の手入れなどを行う)から排出された木くずは業種限定に該当しないので「一般廃棄物」になります。
ここがかなりややこしいので、廃棄物処理会社の従業員でも完璧に把握できている人は中々いないんじゃないでしょうか。
ちなみに、産業廃棄物の処理責任は事業者にあり、政令で定める収集、運搬及び処分に関する基準に従わなければなりません。
一般廃棄物
ここまで説明してようやく「一般廃棄物」の説明ができるのですが、ややこしいことに一般廃棄物はさらに「事業系一般廃棄物」と「家庭系一般廃棄物」に分別されます。
簡単に説明すると、事業活動に伴って排出された産業廃棄物以外のごみを「事業系一般廃棄物」、皆さんの家庭から排出されたごみを「家庭系一般廃棄物」といいます。
これだけだと別にややこしくないじゃん?と思いがちですが、実例を出すと本当に訳がわからなくなります。自治体によってこの判別が異なる問題、代表的な例に「お弁当ごみ」があります。
「お弁当ごみ」問題!自治体によって異なるその見解
皆さん、「職場で従業員が食べたコンビニ弁当などのプラ容器」これは産業廃棄物だと思いますか?それとも事業系一般廃棄物でしょうか?
廃棄物の種類としては「廃プラスチック類」に該当しますが、考え方としては
①従業員の飲食は事業活動なのか?
①従業員の飲食は事業活動なのか?
従業員の飲食が事業活動に該当するかは、単純に昼食時間に対する解釈の問題です。
「就業時間中は昼食中だとしても仕事の一環だ!」と考えれば、産業廃棄物であり、
「休憩時間なんだから私的な活動でしょ。」と考えれば、一般廃棄物です。
この解釈だけでも自治体によって判別が異なります。
②自治体の処理施設が「あわせ産廃」を受け入れているか
「あわせ産廃」とは、市町村が例外的に産業廃棄物を処理できる制度です。
(事業者及び地方公共団体の処理)第十一条(中略)2 市町村は、単独に又は共同して、一般廃棄物とあわせて処理することができる産業廃棄物その他市町村が処理することが必要であると認める産業廃棄物の処理をその事務として行なうことができる。
産業廃棄物をあわせ産廃として自治体が受け入れると、手続き上は一般廃棄物と同じ扱いになります。根本的には産業廃棄物であることに変わりはありませんが、実質、一般廃棄物として扱ってもいいよってことです。
さらに複雑なことを言うと、その弁当ごみを家に持ち帰ってごみ箱に捨てたとしましょう。それは家庭系一般廃棄物として自治体の清掃事業に回収され処理されます。
同じ弁当ごみなのに、住んでいる地域によって産業廃棄物、事業系一般廃棄物、家庭系一般廃棄物の3区分に該当する廃棄物になりました。
皆さんのお住いの地域はどう管理されているでしょうか。一度お調べするのも面白いかと思います。
では、また。
廃棄物の定義とは?有価物との違いはなに?
はじめまして、産廃太郎と申します。
廃棄物処理会社に勤めて約10年、普段生活しているだけでは知り得ない廃棄物の知識を学ばせていただきましたが、知れば知るほど廃棄物の法律は難解で複雑なものになっています。
廃棄物処理会社で実務を担当している方でも「あれ?これってどうだっけ?」と頭を悩ますことって多いんじゃないでしょうか。
このブログは、大前提として私の忘備録的なものではありますが、廃棄物業界に初めて勤める方や、他業界でも排出事業者として廃棄物業務に携わる方に向けた内容にしようと思っています。
今回は廃棄物とは何なのか、有価物との境目はどうやって誰が決めるのかを紹介します。
一見簡単そうな内容ではありますが、法律上ははっきり区別することが難しく、廃棄物に精通している方でも明確な答えは出しづらいかと思います。
その理由を紐解いていきましょう。
廃棄物の定義
まず、日本の法令として昭和45年(1970年)に制定された「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(通称:廃棄物処理法、廃掃法)では廃棄物がどう定義されているでしょうか。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)第2条によれば、「廃棄物」とは「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによって汚染された放射性廃棄物を除く[2])をいう」とされており、産業廃棄物と一般廃棄物に大きく2分類される。
廃棄物は法令上、上記の種類が定まっていて、その不要物を言うんですね。
「なんだ、産廃太郎。明確に答えが出てるじゃないか!」と聞こえてきそうですね。
でも、ちょっと待ってください。
その「不要物」って誰がどういう基準で決めるんでしょうか。
客観説
次に、昭和46年(1971年)の施行当初の通知を確認してみます。
廃棄物とは、ごみ、粗大ごみ、汚でい、廃油、ふん尿その他の汚物又はその排出実態等からみて客観的に不要物として 把握することができるものであつて、気体状のもの及び放射性廃棄物を除く、固形状から液状に至るすべてのものをいうものであること
なるほど。客観的に不要なものと判断されれば全て廃棄物なんですね。
・・・あれ?この言い方って何か引っかかりますよね。
そうなんです。この「客観的な視点」だけで判断すると色々と不都合な場面がでてくるんです。
例えば、排出者にとっては不要物だとしても、ある業者が見れば資源性があり、有価で取引できるものについても廃棄物処理法の対象になるため、リサイクルの促進が妨げられるんです。
???
なぜリサイクルの妨げになるんでしょう。
それは廃棄物処理のためには様々が許可が必要になるからです。
例えば、ある会社の事務所から排出される可燃ごみを料金を貰って回収するには「一般廃棄物収集運搬業許可」が必要になり、製紙会社の工場から製紙残渣が排出され、それを料金を貰って処分するには「産業廃棄物処分業許可」が必要になります。
有価物だと判断してたものが廃棄物であるなら、問答無用で上記のような許可が必要になり、業務のハードルが一気に高くなるのです。
大体、廃棄物処理法は不当な処理や、不法投棄を取り締まるべく施行された法律なのに、有価で買い取ってまで最資源化してる会社まで適用するのは筋が違いますよね。
総合判断説
そこで、さらに6年後の昭和52年(1977年)に前回の通知に対しての改正通知が発出されます。
廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で売却することができないために不要になつた物をいい、これらに 該当するか否かは、
占有者の意思、その性状等を総合的に勘案すべきものであつて、排出された時点で客観的に廃棄物 として観念できるものではないこと
この通知こそが、現在の廃棄物と有価物の境目の考え方になる「総合判断説」の基本になります。
おから事件
具体的にこの「総合判断説」が最初に採用された裁判の内容を見てみましょう。
<事件概要>
豆腐を作るために大量に排出される大豆のしぼりかす「おから」を、都道府県の許可なくお金をもらって引き取っていた業者が、
産業廃棄物収集運搬業および処理業の無許可営業として検挙されました。これに対し、業者は「おからは飼料や肥料として活用
されている資源であり、しかも産業廃棄物業許可の例外とされている『専ら物』であるから、無許可営業には当たらない」と主張しました。
そこで裁判所は以下のとおり判決を下します。
一 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(平成五年政令第三八五号による改正前のもの)二条四号にいう「不要物」とは、自ら利用し又は他人に有償で譲渡することができないために事業者にとって不要となった物をいい、これに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び事業者の意思等を総合的に勘案して決するのが相当である。
二 豆腐製造業者から処理料金を徴して、収集、運搬、処分した本件おからは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(平成五年政令第三八五号による改正前のもの)二条四号にいう「不要物」に当たり、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成四年法律第一〇五号による改正前のもの)二条四項にいう「産業廃棄物」に該当する。
・・・なんだか難しいので、簡単に解説しましょう。
1.おからは非常に腐敗しやすく、不適切な処理をすれば悪臭などを放ち生活環境保全上で支障をきたす可能性がある。
2.有効活用されているおからは全体からみてごくわずかであり、大半は有料で産業廃棄物業者に処理を委託されている。
上記の理由から、最高裁は「その物の性状」と「通常の取扱い形態」からおからを廃棄物と判断しています。
したがっておからを取り扱うには、産業廃棄物収集運搬業および処分業の許可を取得しなければなりません。
総合判断説の5つのポイント
平成25年に出された行政処分の指針についての通知では、従来の考え方をまとめる形で、総合判断説の5つのポイントが示されています。
物の性状:利用できる品質であり、生活環境保全上支障が発生する恐れがないこと
排出状況:排出が計画的で、排出までに適切な保管や品質管理がなされていること
通常取扱い形態:製品としての市場があり、通常は廃棄物として処理されていないこと
取引価値の有無:有償譲渡がされており、かつ客観的に見て取引に経済的合理性があること
占有者の意思:適切に利用もしくは他人に有償譲渡する意思があり、放置・処分する意思がないこと
廃棄物と有価物の違いは?
ここまでまとめてみても、やはり廃棄物と有価物のボーダーラインをはっきりさせるのは難しいと感じます。
絶対的な答えが見つからない場合は、お近くの行政もしくは業者に問い合わせることをおすすめします。
自分の中で答えを見つけながら、慎重に取引を検討しましょう。
それでは、また。